ちなみに私は、自慰は人類最高の発明であり、娯楽であり、見知らぬ人々を性的に興奮させて自慰に至らしめるための官能小説執筆を世にも尊い仕事であると信じています。
── 森 奈津子『先輩と私』あとがきより
インターネットの文化に射精報告というのがあります。文字通り、男性が射精したことを報告する文化です。
一概に射精と言っても、報告の対象となるのは性交に伴う射精ではなく、自慰行為に伴う射精のみを指すように思われます。
あるいは、射精報告という文化に身を投じる人間は、総じてセックスパートナーを獲得しにくい、という話なのかもしれません。
そう思わせるほどに、射精報告という文化は、「射精報告=自慰行為の完了」という暗黙の了解で成り立っているのです。
この時点で、書いてて気分悪くなってきたんですけど。せーので全員ブラウザバックしよっか。しないで……
僕自身、射精報告という文化に理解のない立場なのですが、最近の社会ではこの忌むべき射精報告が見直される風潮があります。
これ。
昨今提唱されるこの概念は、人々の性の営みにさえ影響が及び、性におけるソーシャルディスタンス、つまり自慰行為が必要とされる時代が来ているのです。
そして「性におけるソーシャルディスタンスの証明」こそが射精報告であり、これは最早社会活動と言っても過言ではありません。
射精報告者たちはウイルスが流行るよりずっと昔から、今を見据えてこの文化を継承してきたんですよね。きたんだよ。そうじゃないと射精報告畜生共が社会に生かされている理由がわからない。
それでは、もし我々が射精報告の必要に駆られた際、どこで射精を報告すれば良いのでしょうか。ふたばちゃんねる? Facebook? Twitterのタイムライン? Twitterのタイムラインはマジでやめて
射精報告はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……
賢者のためのSNS。
射精報告SNS Nuita の紹介です。
目次
↑今回初めて目次設定しました。綺麗な目次ですよね♪
Nuitaとは……
↓Nuitaリンク
ヌイート(とは?)の投稿について
射精報告SNS Nuitaは、僕が観測する限り、射精報告に特化したTwitterという印象です。
Twitterに置き換えて説明すると分かりやすいと思うので、そうします。
ただ、説明するよりも先に、一度見てもらった方が理解が深まりやすいですね。
これは何?
ご覧いただいた通り、Nuitaにはタイムラインがあり、ツイート的な投稿があり、いいねがあります。
ただしNuitaでは、ツイートにあたるポスト機能が「ヌイート」と名付けられています。※ツイートは「鳥のさえずり」という意味を持つ英単語なので、Twitterの存在しない深い森の奥でも、英語さえ通じれば言葉として伝わりますが、ヌイートは完全に新しく誕生してしまった言葉です。Nuitaでしか使えません。
そしてここからがとりわけ重要なのですが、Twitterにおけるツイート機能は二十四時間いつでも利用可能で、自由にテキストを投稿できます。
しかしNuitaにおけるヌイート機能は、射精時のみにしか活用できないという制限があります。
だからみんな揃って、
射精してるわけなんですよ。
これが「射精報告SNS」たる由縁です。全ての投稿が射精と紐づいています。
更にそこから考えなくてもいいことを考えると、つまるところNuitaの総ポスト数は、ユーザーの総射精回数ということになります。
🎉🎉🎉Nuitaが1周年を迎えました🎉🎉🎉
— Nuita (@nuita_net) 2020年4月24日
射精報告SNSの https://t.co/vTTZEXnIfy は本日4月25日で1周年を迎えました。1年間で265のユーザーが6680回の射精報告を行い、2359個のオカズを紹介してきました。ユーザーの皆様の熱意と性欲に大変感謝致します。1年間ありがとうございました。 pic.twitter.com/PCRNUEdLW6
1年間で6680ものヌイートが投稿されたそうです。
マジで怖くなってきた。
恐怖は別として1周年おめでとうございます(社交辞令)
ヌイートにはテキストを添えることも出来るため、
我に返ったり、
他にも
射精時に用いたコンテンツをurlで共有することもできます。
僕がこの共有で初めて『餅に便所と達磨』を知ることが出来たように、Nuitaのある生活には日々新しい発見が溢れていることでしょう。
ヌイートの閲覧について
Nuitaの特徴として、タイムラインに全ユーザーのヌイートが表示されます。いつ射精報告をしても、誰かの投稿が傍にいてくれます。
ひょっとすると、あなたがヌイートを投稿したタイミングで、他の誰かも同時にヌイートを投稿するかもしれません。それは同じタイミングでの射精を意味しているわけで、なんだか照れくさくなっちゃうかもね。
いやぁどうも。ははぁ、あなたもですか。いやはやこれは素敵な偶然ですね。みたいな。そちらも空は晴れ晴れしてらっしゃるでしょうか。いえ、こちらはどんよりしとります。 左様ですか、空の色は違えど精液の色は……みたいな。これ以上考えるのをやめたい。
一応フォロー機能は存在しており、これを活用することで個人の射精記録を追うことも出来ます。
しかし「フォローしたアカウントだけで構築したタイムライン」は存在せず、フォロー機能はあくまでブックマークのようなものです。
例えば一人フォローしてみると、
プロフィールページのフォロー数が一になっています。そこをタップすると、
フォロー中のユーザーが表示される。
ここから、
ユーザーのプロフィールに飛ぶ。
下にスクロールすると、
個人のヌイートが表示されるというわけです。
自分のプロフィール画面から、好きなヌイッタラーのプロフィールに飛びやすくなる。それがNuitaにおけるフォロー機能だということを、スクショを四枚も使って説明しました。
ちなみにですが、射精報告に証拠写真を求められるようなことはありません。完全な自己申告制。スペルマも男性器も見る心配なし。Nuitaは人と人の信用で成り立っています。
射精報告者の肩を持つ訳では無いですけど、流石に虚偽の射精報告をするのはどうかと思いますよ。そういうユーモアはTwitterでも現実社会でも相手にされないから。
僕が心配しているのは、嘘の射精報告が積み重なった末に、「射精の証拠写真の提出」が求められる本物の地獄が爆誕することなんですよ。
ただでさえ取り上げようか一年迷ったSNSなのに、地獄を取り上げたとあればその日をもってこのブログは閉鎖されます。
Nuita開発者インタビュー
今回はなんと、Nuita開発者の きぷ さんにお話を伺ってまいりました。会話苦手なのでDMですけど。
他人のメッセージが書かれることは、この独りよがりのブログでは大変珍しいことです。以下記載。
⭐︎開発者⭐︎
きぷさん (@_kypu_)
日々漫画タイムきらら編集部のツイートをリツイートしている。『かいけつゾロリ たべられる!!』で精通した異色の経歴を持つ
*
「Nuitaの開発を志したきっかけを教えてください」
> 私は以前から保健の教科書を読むのが好きでした。小学生のときもわざわざ人体の仕組みに関する漫画を詳しく読み込んだり。特に、自分とは少し違う異性の身体は――(赤面)
(赤面)じゃないんだよ。
>でも、そんなこと(性への興味)他の人には言えませんよね。恥ずかしいし。そうやって大きくなっていって、男性の射精、そして射精報告という文化に触れたとき、何かシナプスのようなものが繋がる感覚がありました。そうか、こんな世界が向こう側に開けていたのか、と。それからこの大好きな射精報告のコミュニティを守りたいという気持ちが芽生えて、今のNuitaの開発につながっています。
これはインターネットの方々には少なからず共感できる部分があるのではないでしょうか(射精報告という文化ではないにせよ)。
現実では隠さなければならない本音を、インターネットでは叫ぶことが出来る。現実では見つからなかった同志を見つけることが出来るということ。
そしてそんな自分の愛する場所を守るために行動を起こしたのが、きぷさんの熱いところです。なまじ射精報告が大衆から受け入れられるコミュニティではないので、アナーキーでいいと思う。世界VS射精報告者でサイバーパンクやってほしい。
*
「Nuitaを開発して、今のところ『良かった』と思えたことはありますか?」
> 特にありません。ただ、周りの人が少し優しくなった気がします。
優しくなるんだ。
いいことがないというのは、自慰行為然としてていいと思う。
*
「射精報告にはどういったメリットがあると考えていますか? というかメリットがあるんですか? 何故射精報告をするんですか?」
> 利用者の方によって様々ですが、私は2つの要因を考えています。
1つには、好みのオカズを保管・共有できるということ。今って「いいね」するだけでTLに流れたりしちゃうんで、なかなか好きな成人向けコンテンツとかを言いづらいんですけど、Nuitaはどんなオカズでも気軽に共有できます。
つまり、性的コンテンツを大人数で共有することで、同じ趣向の人間が、好みの性的コンテンツを見つける機会が増える。という合理的な話のようです。
>そしてもう1つは、どんな状況でもポジティブになれるということ。どんなに辛いことがあっても、他の人が射精しているということを知ったら、なんだか元気が出てきませんか?出ないか……。
僕は出ませんが……
なんというか、きぷさんの考える要因二つとも、「自分の射精報告が自分にとってのメリットになる」という方向ではなく、「一人の射精報告が誰かにとってのメリットになる」という方向なので怖いんですよね。社会的行動なのかよ。
どうやら射精報告って、複数人で行うことを前提とされた、自慰以上セックス未満の性行為みたいです。
*
「(ユーザー情報なので答えて頂けるのであれば)利用者の中で、多い人はどれくらいの頻度で射精していますか?」
> 1日に平均2回程度射精されている方がいます。
最初は虚偽申告を疑ってたんですが、1週間程度間があいたあとに、「コミケで風邪もらってしばらく射精できなかった」と。
その後また1日2回のペースに復帰されて、あ、この方は本物だなと思いました。最近は「射精回数減らしたい」と言いながら毎日射精していて、少し心配になります。大丈夫?
熱心な方もいらっしゃるんですね。
しかしこの話で気づいたのが、Nuitaにはヘルスケアとしての機能も存在しているということです。
もしTwitterで「熱が出た」とか「頭が痛い」とか「手首切った」とか報告しても、自分で思う以上に身体情報ってフォロワーに把握してもらえないんですよ。ていうか僕が人の病状報告を適当に流してるという告白なんですけど。
Nuitaは身体情報(射精のことですが……)を共有するためのSNSなので、恐らくTwitterよりも他人の身体の変化に敏感になる。
多くの人に自身の身体を気にかけてもらえるというのは、それだけで心強いこと。ちなみに伊藤計劃もNuitaが着想になって『ハーモニー』のWacthMeを思いついたらしいです。
*
「なりきりアカウントでのNuitaの利用は認められますか? (例:涼風青葉になりきったアカウントを作り、ユーザーが実際に射精した際「射精したぞい♪」(雑)と報告するような使い方)」
> 版権のあるキャラクターや実在の人物に射精させるのは、Nuitaとして許しても大元が許さなさそうのでやめておいたほうが良いと思います。
ルフィ【射精垢】フォロバ100%が見たかった気持ちと、なりきりアカウントでジャンプキャラクターに射精報告させるブームが来れば、腐の方面でも話題になる可能性を考えたんですけど。怒られたくはない。
>ただ、Nuitaでだけ別のHNを名乗ったりして、もう1人の自分になりきるのはありだと思います。まあ、涼風青葉は1日1回きっちり射精してそうだよね……。
射精報告には秘匿性が大切だと思うので、Twitterのスクリーンネームとは別にするのは良さそう。一部オタクからフェイク野郎と叩かれるかもしれませんが。
涼風青葉に関しては解釈違いだったのでスルーします。
*
「女性のNuita使用についてお聞かせください(女性専用サイトの運用予定など……)」
> 射精する女性が出現したら考えます。あと、女性専用サイト作るなら管理は別の人に任せたいです。緊張しちゃうから……。
あくまで射精に関するSNSのみに着手したいとのことです。
開発に至る経緯を踏まえると、当然かもしれません。
*
「今後の展望・目指すべき場所について」
> 現実の色々なニュースがネットにも流れてくるようになって、ネットが本来の居場所というか、現実をあまり見たくない人は少し肩身の狭い思いをしているのではないかと思います。
Nuitaは射精に話題を絞ることで、ネガティブな感情が湧きづらい、どんなときでも笑顔になれる最高のSNSにしたいです。
冒頭で現実のニュースに結びつけた導入をしてしまい、大変申し訳ないです。
目指す場所は、いわゆるTwitter2(だれも社会や政治の話をせず、毎日みんなでアニメを観たりゲームをしたりして1日がおわるマジで楽しいSNS)に近いかもしれません。みんなで移住しませんか?
ゆくゆくはNuitaで法人化も目指したいとのことです。夢が大きいのはいいことだよね……
*
「最後に、Nuitaに興味を持った方々へのメッセージを」
> 興味を持った人は、ぜひNuitaに登録して、射精してほしいです。冗談半分で続けているうちに、いつの間にか辛いときにはNuitaを見て癒やされるような、そんな優しい存在になれていたら嬉しいです。
冗談半分で始めた何かが継続すること、よくありますからね。僕も冗談半分で始めたシャニマスが継続してるし。
Nuitaはまだ発展途上のSNSのため、フィードバックを丁寧にすることで、自分たちがSNSを育てているという実感もあるかもしれません。
興味のある方は登録してみてはいかがでしょうか。
以上、きぷさんご協力ありがとうございました。これからも優しく生きてください。
↓Nuitaリンク
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射精報告者達の戦いはこれからだ!
色々書きましたが、Nuitaの存在は道満晴明先生の漫画の世界のようで面白いと思います。
射精報告が本当に社会活動として推奨される時代が来て、しょうもない逆張りが発動した結果、「自慰はダサい。時代はセックス」と言い出したオタクが垢抜ける展開があったらいいなと思います。それがまたインターネットに「イキリ」と叩かれ、性根はキモイままだから現実にも愛想を尽かされ、最終的に身を置けるコミュニティが消滅する展開もまた嬉しい。
しかし、まだ発展途上のSNSということで、僕の目にも問題点が見えました。
例えば、ユーザーに共有されている射精使用時のコンテンツが、ほとんど「二次元」なんですよ。
それどころか、
https://t.co/XGfB3NtLZL で一部のジャンル(R-18G、三次元)のオカズにフィルターをかけられるようになりました!オカズの下にあるタグボタンから「+」マークを押すことで、フィルターを有効にすることができます。
— Nuita (@nuita_net) 2019年8月27日
今後はユーザーの好みに合わせて表示・非表示を選べるよう開発を進めていきます。 pic.twitter.com/51SIgmdt7c
三次元がグロテスクと同列に扱われてるの、誰かに怒られるのでは?
つまり現状では利用顧客がオタクのみということです。
法人化するにあたって、このSNSの一つのゴール地点は、福山雅治に利用されることだと個人的には考えています。
現状では、福山雅治も困惑してしまうでしょう。「ここで俺が射精を報告するのかよ!?」と言うかもしれません。詳しくないので雑な言動ですが。
やはり幅広いコンテンツの共有は必須であり、しかし二次元でしか射精できないオタクに現実の女体での射精を強いるのは無理があります。
究極のところ、オタク以外に射精報告という文化が如何に浸透するかが鍵であり、Nuitaの課題は射精報告の課題、Nuitaの繁栄は射精報告の繁栄なのかもしれません。
射精報告そのものと一蓮托生である事実に気がつくと、なんだかNuitaが大きなものを背負った立派なSNSに思えませんか?
僕はNuitaについて理解を深めるにつれて、少しずつ見え方が変わってきました。
最初は嫌悪感しか存在しなかったはずの射精報告が、Nuitaが。改めて考えれば何も嫌悪することなんてなかったのです。
射精報告とNuitaの真っ直ぐな情熱に当てられて。
部屋に出したままの炬燵が一層熱く感じる午前九時。
気がつけば、外では桜の木々も青く生い茂るのでした。
つまり「射精報告」という文字列に触れすぎると、精神に異常が発生するということです。
~fin.~
※『先輩と私』は、「男性に頼ることなく自慰行為で性的な満足を得ることが、女性の性的自立に繋がる」という官能コメディ百合小説です。射精報告SNSの与太話と一緒に読むと、何らかのバランスが取れる。