また惜しいヤツを亡くしたよ。
本当に良いヤツだったんだ。いつだって世界は良いヤツから亡くしていく。
亡くなったヤツは誰だって良いヤツだ、なんて諺も世界を探せばどっかにあるかもしれない。だけどヤツは生前から正真正銘の良いヤツさ。かのメタルゴッド、ロブ・ハルフォードだってヤツを知ったらきっと言っていたね。「無敵の車輪ペインキラーとは正しくヤツのことさ」ってね。ヤツのことをどうしようもないクソッタレだって言うのなら、ソイツの目にはイエス・キリストだって腐ったピーナッツバターに映ることだろうよ。
違うんだ。俺は感傷に浸ってアンニュイなポエムを書きなぐりたかったわけじゃないんだ。俺はヤツの名前を伝えたいんだよ。頼むからヤツの名前を聞いてくれ。飛びっきりクールで、この世を去ると共にいっぱいの涙をばら撒いていった、罪深いコミックの名前を聞いてくれ。
ヤツの名は
『月曜日は2限から』だよ。オタクのみんな、ついてきているか?
月間少年サンデー、通称ゲッサンで斉藤ゆう先生が約4年間連載を続けてきた四コマ漫画、『月曜日は2限から』が2016年9月12日発売のゲッサン10月号をもって最終回を迎えました。
僕はこの漫画が本当に滅茶苦茶大好きで、だけどインターネットであまり話題にならないのがもどかしくて、そしてAmazonのレビューでどこの馬の骨とも分からない感性の乏しいオタクが
という嘘八百のレビューを書き連ねて星2つにしているのを読んで悲しくなります。
『月曜日は2限から』が"ギャグも会話の特徴もない流行りの日常物である"ってDaichi、お前正気か? イエス・キリストが腐ったピーナッツバターに見えているのか?
『月曜日は2限から』の魅力の一つは間違いなく"尖った会話"なのですが、そこを真っ向から否定するレビューを書いた上に、「3人のお客様が役に立ててしまっている」の悲しすぎます。
ただ、Daichiの憎みきれないところは、『月曜日は2限から』を何故か3巻まで読み進めていて
というレビューも星四つで書いているところです。
感性の違いというのは事故みたいなものですし、DaichiもDaichiなりに『月曜日は2限から』を楽しんだのかな、ということでDaichiとはこれで手打ちにしたいと思います。
それでは前置きが長くなりましたが、今回は『月曜日は2限から』について書くので読んでください。僕の言葉で『月曜日は2限から』について知ってください。
____________________________
『月曜日は2限から』は、滅茶苦茶校則の厳しい高校で金髪の女子高生と、その悪友である男子高校生が校則を破りまくる、という内容の漫画です。
そうやって説明すると「随分と激しくてアウトローな漫画だね」と思われてしまいますが、決して激しくはなく、羊が草原を歩き回るが如く穏やかな空気感で進行するボヘミアンな日常(?)漫画です。
咲野瑞季ちゃん。金髪女子高生。
居村くん。咲野瑞季ちゃんの悪友。
ちーこ先輩。風紀委員長。
それではDaichiが言うような、よくある日常モノと比べた時に『月曜日は2限から』の"良さ"、"強み"、とは一体何かと言うと、それは「技巧的で尖った刃(会話劇)」と「突飛なラブ・シチュエーションから繰り出される異次元からの刃(トキメキ)」です。刃に"会話劇"と"トキメキ"、二つのルビを振らせて頂きました。
もちろん細かい点を挙げれば"良さ"なんてたくさんありますが、個人的にはこの二つがメインウェポンだと思っています。
さて、『月曜日は2限から』についてより詳しく紹介していきたいのですが、ベラベラと御託を並べるのはここで終わりです。
と言うのも、実は4ヶ月程前にフォロワーの方が、既に『月曜日は2限から』について詳しく紹介した記事を書いているのです。
完全に先を越されました。
ですので詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。僕よりもずっとモノの良さを分かりやすく伝えるのが上手な方です。
月曜日は2限からとか言うダラダラ読める漫画www - いつかたどり着く
月曜日は2限から
2016/09/13 19:00
「僕の言葉で知ってくれ」と言いながら他人に託すのごめん、だね。
では、残ったスクロールで僕のブログは何をするのかと言うと、ここからは『月曜日は2限から名四コマセレクション』をやりたいと思います。
ネタバレには配慮するので、『月曜日は2限から』を読んだことがない人はこれをサンプルに『月曜日は2限から』の具体的な"力量"を知ってください。まあバレて困るようなネタはないのですが、ちゃんと言うと単行本を読んだ時に白けることがないようにの配慮です。
ファンの方は、ここで振り返って共感だったり懐かしさだったりを覚えてくれたら嬉しいです。
なお、先ほど『月曜日は2限から』の良さとして挙げた、「会話劇」と「トキメキ」という二つを余すとこなく伝えるために、今回は『会話劇部門』『トキメキ部門』の二つの部門を設立いたしました。
各部門5つずつ四コマを紹介しますので、紹介中の飲食、喫煙、フラッシュ撮影はご遠慮ください。
それでは『会話劇部門』 からご覧いただきます。
________________________
・『月曜日は2限から』の会話劇5選
①情に訴える警官的な
5巻60限目『やはり君が犯人か……』より
場面は風紀委員室の鍵が盗まれ、咲野瑞季ちゃんが容疑者を問い詰めるシーンです。
情に訴える警察官風にやたら血縁を泣かせようとしますが、誰もいなくて最終的に変な理屈で押します。
咲野瑞季ちゃんが変な理屈で押して怒られたり突っ込まれたりするのは『月曜日は2限から』の基本ムーヴの一つです。その変な理屈の中でも一際好きなのを選出しました。
泣かずに産まれてくる赤ん坊はいない。正解。
②髪の毛と善悪
2巻25限目『その温もりが、痛く。曇る。』より
紆余曲折あって、咲野瑞季ちゃんはお風呂で妹に頭を洗われています。
技巧的な会話の中でも僕のイチオシの一つです。
金髪のケアだけは真面目→つまり根っこまでは悪に染まってなし→でも根元が黒くなっているよね……
という理屈の通し方を淡々と行います。日常モノよりも頭を使って書いている感、伝わりますか?
話はそれますが、僕は金髪女子高生が大好きで、それ故に『月曜日は2限から』を敬愛しているというのは少なからずあります。
金髪女子高生が出てくる作品でも、具体的にどうして髪の毛が金色なのか、生まれつきなのか染めているのか、について言及されている作品は殊更名作です。
咲野瑞季ちゃんの髪は金色に染められていることが分かります。
が、お前はどうなんだ?貧乏
(参考画像、シャロちゃん)
③野菜
1巻3限目『揺らがぬ女と揺らぐ女』より
言葉遊び的な側面を持った初期の四コマ。
まず1コマ目から突然漬物を背景にして、おばあちゃんの一口知恵袋みたいなのを言い出す時点でウケます。
完全に『漬け込む』『腐る』の伏線のためでしかないのですが、ここまで露骨に孤立したコマを挿入する事はなかなか珍しいので却って好きです。
言葉遊びは『月曜日は2限から』の十八番です。隙あらば駄洒落から無理問答まで繰り出します。派手さには欠けるかもしれませんが、いぶし銀の妙技は、"四コマ"を味わい深いモノへと仕立てあげています。まるで、良く"にこま"れたスープのように……
"四コマ"なのに"にこま"とはこれ如何に、という苦しい無理問答でENDです。
④目を使う
2巻21限目『何かを騙す。思い出す。そして利用する。』より
一コマ目左、咲野瑞季ちゃんの妹の目が悪くなったんだよ、という流れでの会話。
1コマ目の「馬鹿でいいよ」を経ての2コマ目のセリフが、三コマ目の「馬鹿っぽい」で『つまり馬鹿』という感じで落ち着き、四コマ目の「悪女だね」が「目の悪さ」 と掛かっているという凝った会話劇になっています。
これだけでも良い四コマなのですが、「目が悪くなったら好きな人の顔が見えない」「目が悪いと好きな人に接近できる」という発想に"きゅんとして痺れ"です。
「アタシ、睨んでるって言われてよく怖がられるんだよね」
「たしかにA子は睨んで見えるよ」
「それは違うの。目が悪いから、よく見ようとして細めちゃうだけなの」
「それじゃあ近づいてよく見たらいいよ。こんな風に」
そう言ってB子はA子に顔を寄せると、ついでに唇を重ねる。驚いたA子の目はまん丸で、これっぽっちも睨んでなんてないのだった。
そういう感じで各自応用よろしくお願いします。
⑤かわいい
1巻7限目『わんわんでちゅよー』より
1コマ目の右が若干ぼやけてしまっているのをご了承ください。
『わんわんでちゅよー』 というサブタイトルがまずかわいいのですが、内容の方も負けず劣らずかわいくなっています。
犬が飼い主に似るメソッドを奇抜に活かして、犬の好意が飼主の好意をほのめかす、という正に"きゅんとして痺れ"なシチュです。応用が効きそうな一幕ですね。
「どう
したのっ 」
という居村くんの台詞も可愛げがあります。
まず、文脈からして犬に対して話しかけていると思いますが、居村くんって犬に話しかけるタイプの人種だったのか~と和みます。
また完全に焦っているのが文末の「っ」から伺えますし、吹き出しの都合上改行されたであろう「どう」と「したのっ」のせいで、一回息を飲んだ感じに見えるのが可愛げポイントです。
動物と高校生の絡み、かわいいに決まっている。
というわけで、以上が会話劇部門でした。
5つに絞るのが難しすぎて10時間程悩んで疲れきってしまったため、正直、本当に最高の5つを選べたのか自信がないのですが、少しでも良さが伝わってくれたら幸いです。
ここからはトキメク四コマ5選でお送り致します。
『月曜日は2限から』はゆるやかに校則を破っていくほのぼの漫画ではありますが、ラブもトキメキも生半可ではありません。正直、ここからが本番という感じもありますので、気を引き締めてご覧ください。
____________________________
・『月曜日は2限から』トキメキの5選
①誕生日プレゼント
3巻34限目『祭』より
平然と八コマ貼って申し訳ありません。だってどっちも見て欲しいから……
咲野瑞季ちゃんが居村くんに誕生日プレゼントを渡す場面です。プレゼントのハードルをメチャ上げておきながら映画のチケットを渡す、というギャグで終わりかと思いきや、実はデートの口実になっている、というハメ技です。
これ、メチャ"きゅんとして痺れ"では?
普通に女の子からされたい気持ちもありますが、男の子が女の子にやっても効果アリだと思います。
今の時期だと『君の名は。』との合わせ技で落とせない異性はいないので無敵です。
節度を持って活用してください。
ちなみに先程から使用している"きゅんとして痺れ"ですが、「凛として時雨」を意識した語感になっています。流行れ。
②神社の境内
4巻44限目「waiting for…」より
やたら4が並んでいる話数から、初詣は人が多いから手を繋ごうね、というストレートにトキメキのシチュエーションを選出。
普通に八コマですが、ここで「四コマ」を切り抜くと"4"が"4つ"になってしまうので致し方ないことです。
この場面、何にトキメクかと言えば「手を繋ぎたくない」からの「だって走って迎えにきてくれるでしょ」の破壊力に違いありませんが、頬を赤らめながら慣れない心地で「……手繋いどく?」という居村くんにも"きゅんとして痺れ"です。
既読の方にしか伝わらないのですが、「……手繋いどく?」なんてラブな台詞、居村くんが咲野瑞季ちゃんに対して言うのはこれが初めてなんですよ。
着物の魔法に当てられて、あくまで"悪友"の2人が異性として意識する。そういうトキメキがつまった思い出の一幕です。
③テンション下がる
5巻61限目『あ……~ん』より
雨の中ハンバーガーをテイクアウトした後の下駄箱での一幕。タイトルの『あ……~ん』がやらしい感じですが、「はい、あ〜ん」の「あ〜ん」です。
率直に言って
これにトキメカないオタク男子、いるか?
好きな男の子に近づいて喜んじゃう女の子、可愛すぎるんですよ。"きゅんとして死"です。キュン死です。
こういうの"何萌"って言うかご存知ですか?
恋する乙女萌えですよ。
女の子って恋するだけで可愛くなるからズルイですよね。
④ヤバイ
6巻69限目『桃色の夜』より
伝説の69限目より選出した四コマ。
この69限目、『桃色の夜』だとか『69』だとか既に性のメタファーに囲まれているお話なのですが、とにかく全体を通してプラトニックなトキメキに溢れた伝説の回です。
どれくらい凄いかと言うと、69限目がゲッサンで連載された日には、普段『月曜日は2限から』について誰も触れていない2ちゃんねるのゲッサンスレに、「たまにこういう回があるから『月曜日は2限から』は侮れない」というレスが付いた程です。ピンと来ないかもしれませんが、「レスがある……」と僕は感動していました。
掲載した四コマの方に触れますが、特別言う事はありません。会話こそ機知に富んでいますが、とにかく「こら!チューさせろ!」という台詞が全てです。「こら!チューさせろ!」って可愛すぎる台詞なんですよ。咲野瑞季ちゃんのいい笑顔も相まって史上最高の一コマになってしまいました。
「こら!チューさせろ!」に対する最適解ってなんでしょうね。
「絶対に嫌だね!」と言いながら「べー」って舌を出したら、その舌ごと絡め取られてチューされちゃうヤツですかね? 完全にどっちも女の子で思い描いています
果たしてチューしたのかしていないのか!?はたまたセックスまでしたのか!?それは『月曜日は2限から』6巻で確認してください。
⑤最高だよ
1巻6限目『ノックノックジョーク』より
僕が『月曜日は2限から』を心の底から好きになったのは、この四コマがきっかけだったのかもしれません。
6限目、最初から最後まで通して読んで、一つの物語として完成度の高い話なのですが、『傘を部屋に見立ててノックする』というただ一点の力を持ってして、僕は作者の斉藤ゆう先生に敗北しました。
傘をノックするという異次元からの発想。そしてそれを女の子がするのって、絶対に可愛くてトキメくんですよ。
天気は雨。雨と言えば基本的に物語において不吉なモチーフとして使用されますが、その不吉さを裏切り、雨を最大限にトキメキへと変換したこの四コマは僕の希望です。雨が降った日に落ち込んだ僕を支えてくれるのは、この四コマだけです。
虹をかける必要なんてないのです。ただ単に傘をノックする。それだけで良かったのです。
____________________________
以上をもって『月曜日は2限から』の紹介は終わりです。
本当に見せびらかしたい四コマが山ほどあるのですが、それでは販促にならないので涙を飲んで10こです。
斉藤ゆう先生からしたら、「10こも無断掲載しているので死ね!」という心持ちだと思うのですが、僕の口では伝えることの出来ない"凄さ"を実際に見て確かめて欲しかったんです……インターネット特有の法律のグレーゾーンと、これからのコミック売上増加の期待に免じて許してください……
『月曜日は2限から』は本当に素敵な漫画でした。もろもろの作業後に発売される7巻をもって最終巻となるわけですが、切なさと、綺麗に終わってくれる嬉しさがせめぎ合い、複雑です。
僕の大学生活の4年間は、偶然にも『月曜日は2限から』の連載した4年間と重なっています。
たしかに僕は基本的に1限に出席できない人間だったので、『月曜日は2限から』と自分の大学生活を重ね合わせて喜んだりしていました。
月曜日は2限から、本当にありがとう。
斉藤ゆう先生本人のツイートは淡白な感じなのに、ファンのオタクたちの方が感慨深そうにツイートをしている
— ♥️紗々♥️ (@sasatanwwwww) 2016年9月11日
だってオタクだから仕方ないじゃん……
ブログ色に合わない真面目な感謝をするのもたまには許してよ!ばか!ばいばい!