君の名は。を見たので、流行りに乗って感想を書こうと思います。ネタバレをメチャ含むし、『君の名は。』を見ている前提で話が進むので注意してください。
しかし感想を書くのはいいのですが、僕は新海誠監督の映画を見たのは初めてなので、ネットでよく見かける「君の名は。は新海誠において〜」や「新海誠監督を誰と比べて〜」を言うことができません。
それなので、今回はあくまで『君の名は。』という一つの作品について、『聖剣使いの禁呪詠唱』と比べてみようと思います。
『聖剣使いの禁呪詠唱』が『君の名は。』と似ているようで異なるからです。
・背景
『君の名は。』の予告映像です。
見て頂くと分かると思うのですが、背景の描写がメチャ綺麗です。「メチャ綺麗な背景が新海誠監督の特徴」と聞いたことがあるのですが、その通りなのでしょう。
ではそれに対して『聖剣使いの禁呪詠唱』を見てみます。
『聖剣使いの禁呪詠唱』は、2話にしてヤシの木が終わった感じになっています。
背景の優劣は、二つの作品の重要な違いです。
『君の名は。』は単純に綺麗なアニメーションとして女の子と一緒に見たくなりますが、ヤシの木が終わっているアニメを女の子と一緒に見たくありませんよね?
『聖剣使いの禁呪詠唱』を一緒に見たカップルは破局します。
ちなみに『聖剣使いの禁呪詠唱』史上最も美しい背景描写は雷帝との戦い後のこれです。お空、綺麗
・思い出す。
『聖剣使いの禁呪詠唱』と『君の名は。』、どちらの作品においても「思い出す」という行為は重要なファンクションです。
『聖剣使いの禁呪詠唱』においては、主人公の灰村諸葉くんがピンチに陥る度に、確定演出的な回想が入って前世の記憶を思い出して強くなります。
思い……出した!
『君の名は。』では、瀧くんと三葉ちゃんが顔を合わせることで互いの名前を思い出します。「会えば絶対すぐにわかる!」って予告でも言ってましたね。
さて、『君の名は。』は瀧くんと三葉ちゃんのダブル主人公の物語ではありますが、ここでは瀧くんの視点に立って話を進めたいと思います。
瀧くんが思い出すのは「三年前に三葉として体験した記憶」です。そして灰村諸葉くんが思い出すのは「前世の記憶」です。
つまり『君の名は。』における「三年前」に当たるのが『聖剣使いの禁呪詠唱』における「前世」なのです。
"思い出す記憶の距離"の違いは重要で、こうして抜き出してみると、『君の名は。』が等身大のロー・ファンタジーで、『聖剣使いの禁呪詠唱』がハイ・ファンタジーに近いものであることが何となく伝わると思います。
また、『聖剣使いの禁呪詠唱』において、「前世」というかけ離れた時間は思い出すだけのものでしかなく、ただの置物に近いです。
その結果、物語も「思い出して強くなる」という「レベルを上げて物理で殴れ」くらい単調なモノになってしまいました。
その点、『君の名は。』はヤバイです。「前世」に当たる「三年前」が極めて身近な時間軸のため、物語に密接に絡んできますし、そこにダメ押しのように付け加えられた「入れ替わり」という要素がアホほど機能して最強に見えます。
『聖剣使いの禁呪詠唱』を貶めて『君の名は。』を絶賛するみたいなことは止めたいんですけど、相手が悪くてそういう感じになってしまうの許してください。
刃牙に瞬殺されたマホメド・アライJrを思い浮かべてしまいます。
・男女関係
『君の名は。』は恋愛を題材にした物語です。『聖剣使いの禁呪詠唱』に関しても疑問の余地はありますが、一応恋愛を一つの要素として数えることができます。
両者の恋愛を比べてみます。
まず『君の名は。』に関してですが、恋物語を唄っているにも関わらずキスはおろか、手をつなぐ描写すら出てきません。唯一"性"を意識させるのは、毎朝自分のおっぱいを揉む瀧くんと、トイレに行って顔を赤らめる三葉ちゃんだけです。極めてプラトニックなお話だと見て取れます。
しかし心が入れ替わるという事象は、単純なスキンシップよりも恋心を掻き立てるものなのでしょうか。「愛などいらぬ」と豪語した聖帝サウザーも、女の子と入れ替わって毎朝おっぱいを揉んだら「はあ……好き」とかTwitterで言い始めるんですかね?
僕も1回経験してみたいものです。
『聖剣使いの禁呪詠唱』においては、『君の名は。』と比べて男女のスキンシップが激しく描かれています。
まず、おっぱい要素は朝飯前です。完全に『君の名は。』を超えてきます。
キスだって余裕です。「キス位いいじゃない……減るものじゃあるまいし」と言った女の子に対する「減るよ……女の価値が」というAnswerは僕の中でえらくウケており、屈指の名シーン認定されています。
そしてついには、裸の男女がベッドインします。瀧くんが手のひらに「好きだ」って書いている間に、『聖剣使いの禁呪詠唱』はSEX紛いのことをしているのです。
以上のように、恋愛描写(性を意識させる描写)に関しては圧倒的な差があります。プラトニックな恋が見たい紳士淑女の方々は『君の名は。』を見て欲しいですし、普通におっぱいが見たいオタクは『聖剣使いの禁呪詠唱』を見ればいいと思いますし、かわいい女の子が見たいなら『ご注文はうさぎですか?』を見てください。
(参考画像、シャロちゃん)
・再会
ボーイミーツガールに関して両者の作品は似ています。
『聖剣使いの禁呪詠唱』においては、前世で妹だった女の子に再会します。
『君の名は。』では、三年前に入れ替わっていた三葉ちゃんに再会します。
では、『聖剣使いの禁呪詠唱』の"再会"について詳しく振り返ってみます。
灰村諸葉くんは入学式で眠っています。
見ている夢は前世での妹の夢です。夢は記憶の整理と言いますから、前世の記憶もあるとカオスな夢が見られそうです。
気持ちよく寝ているところに頭突きをかまされる灰村諸葉くん。前世での夢は覚めて現実世界に引き戻されます。
目の前には夢の中で見た前世の妹と滅茶苦茶似ている女の子が立っています。
顔を見た瞬間に、前世の妹の名前を思い出したので「サラシャ?」と言ってみます。
"前世の妹"の名前を呟いたら、目の前にいたのはやっぱり"前世で妹だった女の子"だったので、「おにいさま〜〜〜」とダイブをかまされてボーイミーツガールはENDです。
これ「私たちは会えば絶対すぐに分かる!」っていうヤツだ!
しかしあくまで『聖剣使いの禁呪詠唱』は『聖剣使いの禁呪詠唱』ですし、『君の名は。』は『君の名は。』なので両者の"再会"には違いがあります。
一つ目の違いは、物語における再会の位置づけです。
『聖剣使いの禁呪詠唱』において上記の再会の件は、1話の冒頭部分です。ラブコメ開始のための"再会"なのです。
ですが『君の名は。』における再会は、ご存知の通り物語の最後です。「君の名前は……」とタイトルコールで締めてくれます。
『聖剣使いの禁呪詠唱』の再会が恋の始まりなのに対して、『君の名は。』の再会は愛の始まりなのです。
もう一つ、再会について描写の繊細さも異なります。
『聖剣使いの禁呪詠唱』では目の前に"前世の妹"と似た女の子が立っているだけで「サラシャ」と躊躇なく名前を呟きました。妹も「おにいさま〜〜〜」と乗っかります。
『君の名は。』最後の再会については語るまでもありませんね?「なんとなくこの人を探していた気がする……相手も同じことを思っているのだろうか……」という繊細すぎる心情を階段の昇り降りで見事に表現してくれました。
『聖剣使いの禁呪詠唱』に関してはそもそも空気感がふざけているので、仮に目の前に立っているのが"前世で妹だった女の子"じゃなかったとしても、「あんた何言ってんの?」から始まって紆余曲折経た後に「このシスコン〜〜!」と落ち着いて許される雰囲気がありますから、多少雑な言動は許されます。
しかし、『君の名は。』で「あの……どこかで」と声をかけた相手が知らない人だったら、確実に瀧くんの心は壊れて就職活動が失敗して視聴者は泣き崩れてしまいます。
そういう繊細な描写が活きる空気感や世界観もまた『聖剣使いの禁呪詠唱』とは大きく異なります。
ところで"前世の妹"ってパワーワードですよね。
・倒すべき敵、救うもの
『聖剣使いの禁呪詠唱』において最大の敵は「エンシェントドラゴン」でした。
このエンシェントドラゴン、灰村諸葉くんが転生をする度に姿を現し、灰村諸葉くんから大切なモノを奪っていくという邪悪な存在なのです。
『君の名は。』で「エンシェントドラゴン」に当たる倒すべき敵とは「ティアマト彗星」です。
三葉ちゃん、糸守町の人間、糸守町そのもの、瀧くんから大切なモノをすべて奪っていく美しくも残酷な彗星。『聖剣使いの禁呪詠唱』 における「エンシェントドラゴン」並に繰り返し登場して、視聴者に刷り込みが行われる重要なモチーフです。
さて、まず『君の名は。』から見てみると、最終的に瀧くんと三葉ちゃんが救ったのは「糸守町の人間の命」でした。
彗星を倒すわけではなく、町を救うわけでもなく、ただ住民の避難を誘導して命を繫ぐ。そういう等身大の『高校生のできる限りの戦い』という感じがメチャ熱くて、僕は見ながら泣いていました。
(参考画像、糸守町)
では『聖剣使いの禁呪詠唱』でエンシェントドラゴンから救ったものは何かと言うと、「人の命と街の存在」なのです。詳しく振り返ってみます。
エンシェントドラゴンに裏を取られるダブルヒロイン。ちなみに"前世で妹だった女の子"の隣にいるのは"前世で妻だった女の子"です。
裏を取ったエンシェントドラゴンの攻撃。2人は石にされてしまいます。
■灰村諸葉、キレた!!
エンシェントドラゴンを倒すために禁呪「コキュートス」を使おうとします。
しかし、この「コキュートス」は恐ろしい呪文で、過去にロシアの地形を変えてしまった程の威力を持つのです。
先ほど貼った『聖剣使いの禁呪詠唱』史上最も美しい背景は、何を隠そう「地形が変わった後のロシア」でした。湖が一つ増えてしまったのです。
今回も「コキュートス」を使おうものなら、エンシェントドラゴンはたしかに倒せますが、日本に湖が一つ増えるのは必至です。
そこで2人の石化してしまったヒロインは、ご都合主義を超越した何かで石化を解除して目覚めます。
怒りに狂う灰村諸葉くんを正気に戻します。
ちなみに"怒り狂う灰村諸葉くんのギザギザ感"は基本的に面白いので一見の価値ありです。
正気に戻った一行は空を飛んで
呪文の力でメチャ大きくした剣でエンシェントドラゴンをぶった切ってENDです。救われました。
振り返って分かったように、『聖剣使いの禁呪詠唱』においては、エンシェントドラゴンを倒して人の命を救い、また「コキュートス」によって湖になりそうな街も、一つ救われました。
ここが『聖剣使いの禁呪詠唱』において『君の名は。』と対極にある点です。
『君の名は。』 の彗星は止まらず、糸守町は湖になります。ですが、『聖剣使いの禁呪詠唱』ではエンシェントドラゴンは倒され、街が湖になることはないのです。
一つの落ち度もない完全無欠のhappyENDを遂げたのが『聖剣使いの禁呪詠唱』だったのです。
今回の記事で初めて『聖剣使いの禁呪詠唱』を褒めた感じになりましたが、呪文で大きくした剣でぶった切ってENDってなんだよ。『君の名は。』が「糸を紡いで作った結びの刀」みたいなヤツに、みんなの想いが乗っかって流星を砕いてhappyENDを迎えるくらいなら、普通に今のままの方が素敵な終わり方ですからね。
ちなみに先ほど連呼した『エンシェントドラゴン』は原作には登場しないらしく、通称『原作者も知らないドラゴン』と有名です。原作者も知らないドラゴンと、天文学的視点から見ると間違っている彗星を比べてみました。
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もう限界なので終わりにします。そんなにたくさん『聖剣使いの禁呪詠唱』と比べるところは見つかりません。
本来僕は『思い入れが深すぎるモノ』に対してブログ記事を書くのが苦手な人間なのですが、『君の名は。』は思い入れが深すぎました。だって面白すぎる。
『聖剣使いの禁呪詠唱』に関してはソーシャルゲームが最近リリースされました。
興味のある方はやってみてはいかがでしょうか。
RADWIMPSの歌が悲しいくらい『君の名は。』に合っているし、歌の使い方も上手だしムカつくんだよ。「カラスが増えたから殺します」を歌ったのと同じ口で『君の名は。』の歌を歌うな。『君の名は。』の歌しか歌わないバンドだったらRADWIMPSと、握手してやるからよ!
— ♥️紗々♥️ (@sasatanwwwww) 2016年8月31日
完全に余談です。
僕は『君の名は。』にRADWIMPSを使うことに批判的なタイプの人間だったのですが、インスト劇伴音楽から歌入り曲まで本当によく映画に合っていたので最高でした。サントラが欲しくなるレベルです。
ていうか本当に天才的だったので、RADWIMPSはこれから映画の音楽を作るバンドになってくれ。そして2度と「生きてる間すべて遠回り」とか歌わないでくれ。
とにかくすべてが最高なので、『君の名は。』を見てください。「世間が評価してるので〜」みたいな最悪な理由で見ないオタクはシン・ゴジラに殺されてくれ。あと『君の名は。』をデートの口実に使うのは犯罪なので死んでくれ。
絶対に一つも余計な感情を挟まないで『君の名は。』を純粋に楽しんで見てくれよな!
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