手術のために入院することになった
表題の通りの近況です。
7月末に入院します!
過労とかではなく、6年前から原因不明の胸の詰まりに悩まされ、2年に1回胃カメラをしていたのですが、6年目、3回目の胃カメラにしてようやく病気の正体が分かったので手術しよう、という話です。
僕が患ったのはアカラシアという病気で、アカラシアが発症する原因は謎とされています。胸の詰まりの原因は分かったのですが、原因の原因が分からないという鵺(ぬえ)のマトリョーシカに陥りました。要するに謎の病です。
「謎の病」を患った!というだけでもテンション上がってしまうのですが、ここからが本当のテンションの上がりどころです。
このアカラシア、治す手術が「ポエム」という名前らしいのです。
ポエム。
スペルにしてpoem。
詩です。
ガチでpoemね。
こんな『フリップフラッパーズ』みたいなこと、本当にいいのか?
だって、謎の病を治すためにポエムが必要だなんて、考えたこともなかった。手術に名前がついていることも知らなかった。未だかつて、ポエムを身体に取り込んだ詩人いますか?
詩人ですらない僕のような者が、ポエムを処方されるなんて……そんなの…嬉しすぎる!
平成最後の夏。
冷房の効きすぎた白い病室。開け放すと聞こえる蝉の声。ベッドで横になり、床に降り積もる埃を眺める僕。その身体は、詩を待ちわびているのです。
実質『フリップフラッパーズ』。
あるいは、道満晴明先生の短編のようでもあります。
お医者さんから「ポエムっていう手術なんですけど~」と説明された時点で、思わず「ポエム、やりましょう」と即答していました。このシチュエーションのために生きてきたとも思えます。
骨折ひとつしたことがない健康優良児なので、一度入院してみたかった、というのと、お仕事を休める、という要因があり、なかなか嬉しい気持ちがあります
ポエムを待っている僕が、病に犯された色白い少女と友達になり、「元気になったら海に行こう」と指切りする展開はありますか?
彼女は生まれついて身体が弱く、外の世界をまるで見たことがないから、嬉しそうに微笑む展開はありますか?
しかし彼女の病態は一向に回復せず、先に退院した僕が頻繁にお見舞いで訪れる展開はありますか?
訪れるたび祈りのように、彼女へ詩を読み聞かる展開はありますか?
「僕みたいなどうしようもないヤツは元気になって、なんで彼女が」と思うと、悔しくて抑えきれない涙が彼女の口元に零れ、「まるで海みたいね。塩辛いもの」と笑う展開はありますか?
一度も外へ出たことのない彼女が、初めて海を感じるのが涙だなんて、そんなのあんまりじゃないですか?
僕は今後の人生を彼女の笑顔に捧げることを誓うし、それはとても幸せなことではないですか?
ひょっとして僕は、不謹慎なことを言っていますか?
実際のところ、ポエムにも大量出血とか最悪死とか、リスクはある(リスクのない手術ってありますか?)のですが、別にポエムで死ぬなら良くないですか?
死因:ポエム なら最高の死じゃないですか?
人はポエムで死にますか?
伊坂幸太郎さんの『オーデュポンの祈り』という小説に、詩をピストルに込めて撃ちたい青年が出てくるのですが、この話は絡められそうで絡められなかったので忘れてください。
ただ、書きながら気づいたのですが、詩=し=死で、滅茶苦茶不吉なネーミングだなと思いました。
「Per‐Oral Endoscopic Myotomy」の頭文字らしいので、一概に詩ではないんですけど、ちょっと怖くなってきた。
僕だってポエムで死ぬのが本望という訳ではなく、ポエムを処方された後の身体がどんななのか気になりますし、ポエムを身に湛えて生きてみたいとも思う。
それと、8月が終わる頃にはお仕事もようやく辞められるので、なかなか楽しみが多いです。
最高の夏、きた。
純白の夏、きた。
皆様に置かれましては、無病息災を!
最高の夏を!
愛を! インターネットを! 死を! 巨頭オ!
ところでみなさんの自称社会不適合を治すための手術は、「ツイート」という名前らしいです。
こういうの最後に付け加えると、今まで書いたの全部嘘みたいになるからやめたほうがいいな。