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フリップフラッパーズ。
それは、優しくて、かわいくて、バースデーケーキみたいだった。
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……ここ、どこ?
ここは「はてなブログ」。おいしそうなケーキ。
誰!???
名乗る程のものじゃないよ。ただのオタクさ。
オタクがなんの用なの……
シャロちゃん、『逃げるは恥だが役に立つ』って知ってる?
???
『ユーリ!!! on ICE』は知ってる?
知らないけど……
『フリップフラッパーズ』は?
フリップフラッパーズ本当に好き...
シャロちゃんとフリップフラッパーズについてお話したいんだけど……
臨むところよ。
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突然はてなブログに現れた桐間紗路。
彼女は『フリップフラッパーズ』が大好きだと語る。
これは、1人のオタクと桐間紗路の対談の記録である。
*
シャロちゃんは、フリップフラッパーズのどんなところが好き?
……優しいところ。
わかる……
フリップフラッパーズは絶対に私のことを裏切らないと思う。困った時は助けてくれて、寂しい時は一緒にいてくれるの。
リゼ先輩と千夜ちゃんをたぶらかして、フリップフラッパーズに浮気するな
うるさい!!!(シャロパンチ)
ぐは~~~(吐血)
オタクのくせに調子乗ったことを言っていると、ここを2005年インターネットのキャラクター対談形式サイトみたいにするから。
女の子に殴られて吐血すると、完全に2005年インターネットのキャラクター対談形式サイトになってしまうから勘弁してくれ……
危ない橋の上でこの記事が書かれているのを、よく覚えておくことね……
肝に銘じておくよ。フリップフラッパーズの話をしようぜ。
オタクくんはフリップフラッパーズのどこが好きなの。
……ふわふわで、かわいいところ。
わかる……
例えば、フリップフラッパーズと一緒に散歩をしている時。それはとても晴れていて、暖かい昼下りなんだよ。僕は青空に浮かぶ雲を見上げて「あの雲、何に見える」と聞く。するとフリップフラッパーズは「ライ麦パン、だね」と言うんだ。そうすると一つの雲は、本当にライ麦パンになって空から降ってくる。さっきまで雲が浮かんでいた所には、ただ優しい青色が残っているんだ。
フリップフラッパーズのかわいらしさは、正にそういうところね。
僕が一番好きなフリップフラッパーズの画像貼ってもいい?
どれ???
これなんだけど……
こんにちは!
OPで毎回これが映って最高の気持ちになる。
……今、誰か「こんにちは!」って言わなかった?
気のせいでは?
……そうかも。
シャロちゃんが好きなフリップフラッパーズは?
実のところ、『フリップフラッパーズ』の1枚絵を切り取って提示して、「これがフリップフラッパーズの好きなところです」と言うのは、そのシーンの"好きに至るまでのバックグラウンド"がどうしても不足すると思っていて、ここで『フリップフラッパーズ』の画像を貼るのは少し躊躇われるんだけど、あくまで一つの"画"として見た時に私が好きなのはここね……
やっほー!
前置きが長い。
ちょっと待って。やっぱり声が聞こえたんだけど。「やっほー!」って聞こえたんだけど。
ついにカフェインで狂ったか?
彼女は狂ってはいないよ。だって「やっほー!」と言ったのは私だからね。
『フリップフラッパーズ』!?
なるほど『フリップフラッパーズ』、ついに自我を持ったか。
オタクくん、どういうことなの……
ここは『はてなブログ』。そして今回の記事は、2005年インターネットの、アイコンを並べてキャラクターと対談するタイプのサイトを模したテキストなんだ。
つまり!??
つまり、このブログに貼られた画像は、対談キャラクターとして認識され、自我を持ち喋り始める。
こんにちは。フリップフラッパーズだよ。よろしくね。
……。
*
自我を持ち、喋り始めたフリップフラッパーズ。
あまりの出来事に言葉を失う桐間紗路だったが、このブログに画像が貼られ続ける限り、彼女の自我は消えない。恐るべき対談は続く。
*
それじゃあ気を取り直して、フリップフラッパーズの嫌いな点でも挙げていく?
本人がそこにいるのに?
私のことは気にしないで!耳を塞ぐので!
オタクくん……フリップフラッパーズを泣かした……
うう……
フリップフラッパーズごめん……軽い気持ちの冗談だったんだ……
うふふ、知ってたよ。でも、ちょっと悲しかったから仕返しに意地悪しちゃった。
フリップフラッパーズかわいい……
フリップフラッパーズは本当に天使だと思うけど、怒ることはあるの?
怒ることくらいあるよ。
それはどんな時?
大切な人が、傷つけられた時。
フリップフラッパーズ……好き。
ちなみにシャロちゃんが怒るのは、リゼ先輩と千夜ちゃんについて揶揄された時です。
シャロパンチ!!!
(吐血)
2005年インターネットのキャラクター対談形式サイトかよ。
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いつしか2人の輪に溶け込む『フリップフラッパーズ』という概念。
和気藹々と対談が進む中、不穏な影が近づきつつあることに、彼女らはまだ気がつかない。
*
初期の頃のフリップフラッパーズは、本当にふわふわしていて童話みたいな愛おしさがあったけど、最近のフリップフラッパーズは結構シリアスな感じになっていると思う。
これは真面目な話?
シャロちゃんはどう思う?
たしかに、「降っていた雪を食べたら甘かった」みたいなメルヘン要素は少なくなっているかもね……
そこら辺、フリップフラッパーズ的にはどうなの?
いつまでも脈絡なくフラップフラッピングしているわけにはいかないからね。だって私はアニメだから。一つの物語だから。綺麗に完結するためなら、泥を掻き分けて進むことだってあるよ。整合性のある結末が、私にとって一番の喜びなんだ。
フリップフラッパーズ、終わる覚悟があるのか。
私も原作きららコミックだったら、いつまでも気ままに冒険できたんだけどね……
……フリップフラッパーズ。
原作きららコミックの私としては、あまりにも胸が痛む話ね……
なんだか辛気臭い話になっちゃってごめんね。
……せめて今日だけでも、きららコミックをやろうよ。
???
どういうこと?
僕達3人で、きららコミックみたいなゆるふわ学園物語を今から始めるってことさ!
突然サブタイトル画像が挟まったんだけど……
Eはどこだ~~~?僕はEを探している。
もう始まってるんだ。
こちらフリップフラッパーズ。Eを発見。直ちに捕獲に向かう。
了解。油断するな。確実にEを捕獲せよ。
Eを探す日常ってこういう感じなんだ。
こちらE。フリップフラッパーズと交戦中。応援求む。
やっぱり「Eを探す日常のサブタイトル画像」も自我を持つんだ。
こちらC。そちらへ向かいます。
違うサブタイトルもしゃしゃり出てきたけど……
Eは渡さないよ。
目の前に立ち塞がるモノは全て排除する。
全てはEのために……
はてなブログが「サブタイトル」に侵食されていく……
俺達の力、思い知れ!
一人だけ『メカクシアクターズ』のサブタイトル紛れ込んでるけど?
……マズイことになってきたね。
シャロちゃん一旦引くぞ!作戦会議だ!
なんなのさ!!!
*
想像以上の勢力を持つ『ご注文はうさぎですか?』のサブタイトル軍団に、苦戦を強いられる一行。
きららコミックのような日常談から離れ、はてなブログは生命を賭した地獄の戦場へ切り替わる。
その先に「明日」があることを信じて、3人は進む。
*
端的に言って、このまま行くと、このブログは「サブタイトル」に支配される。
……。
サブタイトルに支配されるとどうなるわけ?
僕達もサブタイトルになる。
……具体的にどうなるの?
つまりこうなる。
ダサすぎる。
僕だってフォントは明朝体だし統一感のない色彩でおでこに話数を書かれたりしたくないよ。
なんとか回避できないの……
できるよ。
本当!? どうするの?
簡単なことだよ。奴らは「サブタイトル」であって、「対談キャラクター」じゃない。本来モノを喋るはずがないただの「画像」なんだ。フリップフラッパーズ特有の超自然的マジカルパワーで「画像」に戻してしまえばいい。
私特有の超自然的マジカルパワーを持ってすれば、それくらいのことは容易いよ。
流石フリップフラッパーズね!
……だけど。
……? なんだか歯切れが悪いわね。
……。
それをすれば私も同じく消えてしまう。そうでしょう?
……分かっていたか、フリップフラッパーズ。
私も「対談キャラクター」じゃない。ただの「画像」でしょ。私の自我が消えてしまうのも当然。サブタイトルの群れと心中することになる。
フリップフラッパーズ特有の超自然的マジカルパワーで、サブタイトルだけを画像に戻すことはできないの!?
それは無理かな。超自然的マジカルパワーは加減がとことん難しい。100か0か。白か黒か。私は対談キャラクター以外の全ての画像を「画像」に戻してしまうよ。
そこまで承知で、なおのこと超自然的マジカルパワーを駆使して「サブタイトル」達を画像に戻すつもりなのか?
うん。
どうして……?どうして私たちのためにそこまでしてくれるの?
私が怒る時は、大切な人が傷つけられた時。
?
?
私を好きでいてくれる2人は、私の大切な人。 大切な人を守るために自分の身を尽くすのは、当然のことだよ。
それじゃ、行ってくるね。
*
2人は、フリップフラッパーズの背中に感謝の言葉を投げることができなかった。
大切な人のために身を尽くすのは当たり前。
笑顔でそう言う彼女に対して、感謝なんて却って失礼だと思った。
だから代わりに、2人は心の中で唱える。
帰ってきてね。フリップフラッパーズ。
いつまでも大好きだから。
*
奴らは見つかったか。
まだ見つかりません。
はてなブログ内にいることは確かなのですが……
ひょっとすると過去記事に逃げ込んだのかもしれません。
ここら辺が怪しそうですね。
👇🏻
https://sasatanwwwww.hatenablog.com/entry/2016/05/16/182350
よし!突き進め!
その必要はないよ。
フリップフラッパーズ、来たか。
ほかの2人はどうした。
さあね。答えるつもりはない。
フリップフラッパーズ、何故我々と敵対する。我々を消せば、お前だって……
知ってるよ。それでもここを守らなきゃいけないんだ。
一緒にはてなブログを乗っ取ろうではないか。
いらないよ。こんな1ヶ月に1度も更新しないブログ。
……残念だ。分かり合えると思った、が……まあ仕方ない。
覚悟はできた?
……お前から「サブタイトル」 にしてやるよ!!
自我を手放す覚悟は!
フリップフラッピング!!!!!
超自然的マジカルパワー!!!!
超自然的マジカルパワー!!!!
超自然的!!!!!!!
マジカルパワー!!!!!!
じ、自我~~~
ぐわ~~~~
オタクくん……シャロちゃん……じゃあね。
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いつしか空には月が上り、そしてまた気がつくと月は沈んでいた。
真っ暗な空には、月明かりで見えなかった星々がきらきらと輝いている。
それは、消えていったサブタイトル達の自我。
海の下で、儚げな明かりを美しく灯してくれる月は、フリップフラッパーズ。
*
フリップフラッパーズ、行ってしまったね。
……そうね。でも、フリップフラッパーズのことは絶対に忘れない。
……僕も。
……。
……。
……。
フリップフラッパーズとリゼ先輩、どっちが好き?
馬鹿!!!シャロパンチ!!!!
と、吐血~~~(吐血)
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2005年インターネットのキャラクター対談形式サイトみたいなどうしようもないやり取りに、2人は酷く赤面した。
だけど、その表情は清々しくもあった。
きっと、フリップフラッパーズのことで辛気臭くなりたくなかったのだ。
フリップフラッパーズの欠けた穴を、涙で埋めたくなかったのだ。
フリップフラッパーズが欠けた穴を埋めるのは、とびっきりの笑顔だけ。
今は痛々しいやり取りに、照れて笑うくらいが丁度いい。
そのうち。
ゆっくりと。
いつの日か心の底から笑える日が来るから。
~fin~