おいしいそうなケーキ

わたしなりに一生懸命書いてるんだけど……ダメ、だよね……

後期苺ましまろ問題

 

 

    皆さんは苺ましまろという漫画をご存じでしょうか。

 知らない人間のために説明をすると、苺ましまろとは小学生女児4人と女子高生1人がつるんで仲良くどたばたやるという内容の日常漫画です。


「かわいいは、正義!」


という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、決してTwitter発祥の面白ワードなどではありません苺ましまろのキャッチコピーなのです。
 言葉の通り、女の子のかわいさには定評があり、特に作品の核である小学生4人の描写に力がそそがれています。
 かわいく描かれる小学生たちは、ロリータ嗜好のオタク共に抜群にウケ苺ましまろの中核をなす要素でありながら、かつ武器でもありました。


 余談ではありますが、僕は小学生という存在に魅力を感じないタイプのオタクなので、メインキャラ唯一の女子高生である伊藤伸恵通称のぶ姉がかわいいと言いながら苺ましまろを読んでいます。

 

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 女子高生にして飲酒喫煙無免許運転とやりたい放題の女の子。
吸っている煙草はマイルドセブン(略してマイセン)という現在はメビウスに名称変更されたやつの8mm。
 もしもメビウスの8mmを吸っているお友達が「俺マイセンの8mm吸ってるはw」と言っていたら、そいつは8割方苺ましまろに影響されたオタクです。


 話を戻します。苺ましまろの武器はかわいい女の子だけではありません。

女の子がかわいいだけならごちうさでシャロちゃんを見ているだけで事足ります。

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(参考画像、シャロちゃん)


 ではシャロちゃんと苺ましまろの違いはなんなのかと言うと、それは色々とありますが、一番の違いはシュールなギャグです。


 どうやら作者がお笑いコンビのダウンタウンを好きらしく、それに影響されたシュールなギャグがいたく面白く、なうなオタクにバカウケなのです。

 

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 初見で爆笑したリコちゃんハウスです。ダウンタウンに影響されたのかどうかは全く定かではないですが、実際面白いです。

 この「作者がダウンタウンを好きだからギャグが面白い」という、風が吹けば桶屋が儲かる的な主張は、インターネットで苺ましまろのレビューを探すとやたらに出てくるので、僕も主張してみました。


 さて、ここまでの要点をまとめると、苺ましまろは女の子がかわいくてギャグがウケる、ということですね。
 これさえ押さえておけば、オタク同士のオフ会で苺ましまろの話題が出ても
「あ~あの苺ましまろは女の子が可愛くてギャグがウケるやつね~」

と上手く乗っかることができます。
 しかし、「苺ましまろは女の子がかわいくてギャグがウケる」などという情報はAMAZONのレビューを見ただけでも分かることです。
 それなので、「あ~あの苺ましまろは女の子が可愛くてギャグがウケるやつね~」などと言いすぎるのは、ひょっとしてこいつは苺ましまろを知らないのでは?とニワカ認定される手前までいきます。
 オタクのステータスは、いかに様々な書物を読み、アニメを見ているかに集約されるので、苺ましまろを読んだことがないとバレるのは、今後のオタクカーストに関わってきます。


 そこで今回は、オタク同士のオフ会で苺ましまろの話題が出てしまったというシチュエーションを想定して、オタクカースト上位を狙える苺ましまろ学の命題「後期苺ましまろ問題」についてお伝えします。
 あなたも「後期苺ましまろ問題」についてしっかり学べば、オタクカースト上位間違いなし!

 

 ここまで前置きです(次から本題です)

 

・後期苺ましまろ問題とは

 では「後期苺ましまろ問題」とは何なのかと言えば、僕が勝手に名付けた苺ましまろの軌跡における変容とそれに関わる問題点のことです。
 「後期クイーン問題」をもじったことは明らかですが、後期クイーン問題とかシュレディンガーの猫とかが大好きなオタクなのでそれ故のネーミングです。

 

 まずは、苺ましまろの歴史を見ていきましょう。ここからはお勉強の時間です。

 そもそも苺ましまろがこの世に初めて発表されたのは2001年のことです。今から約15年前ですね。
 当時から今にかけて『月刊コミック電撃大王』で不定期掲載という形式を取っているので、単行本の1巻が出たのは2年後の2003年です。

 こちらがwikipediaから引用した単行本発行の軌跡です

第01巻(2003年1月27日)
第02巻(2003年7月26日)
第03巻(2004年3月27日)
第04巻(2005年5月27日)
第05巻(2007年4月27日)
第06巻(2009年2月27日)
第07巻(2013年3月27日)

 

 3巻が発行された年である2005年にはアニメ化もされており、一躍知名度が上昇しました。

 

 完全に余談ですが、漫画では飲酒煙草無免許運転とやりたい放題の女子高生のぶ姉は、アニメでは流石に許されなかったらしく、設定を二十歳の大学生に変更されています。

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 アニメ化にともなって女子高生を辞めさせられた女の子は、恐らくのぶ姉さんだけでしょう
 もしも他に「メディアミックスの都合で女子高生が女子高生を辞めている作品」があったら教えてください。

 

 2015年12月現在、苺ましまろの連載は終わっていません。まだ続いています。しかし8巻が出る気配はありません。7巻が出るのにも4年かかってますから、少なくともあと2年は出ないと思います。


 ここまでで勘づいた方もいるでしょう。
 苺ましまろの作者、ばらスィー先生という乳酸菌飲料にありそうな名前の方なのですが、この人、完全にやる気ないです

 月刊と週刊なので比べるのは的外れなのですが、あの富樫先生だって1998年から今に至るまでにハンターハンターを32巻出しています。

 もっと分かりやすく比べると、同じ月刊コミック電撃大王で2003年から連載をスタートしたよつばとは、13巻出ています。

 後続のよつばとにダブルスコアつけられる手前ですね。

 

 そもそもばらスィー先生が月刊コミック電撃大王で不定期掲載の形式を取っていたのは昔の話で、今では定期連載の地位を獲得しています。それにも関わらず単行本の発行頻度が年々落ち込んでいるのは、異常な休載頻度が故です。

 具体的にどれくらい休載を繰り返しているのかは知りませんが、とにかく最近のやる気のなさは著しく、単行本の出るスパンは伸びるばかりです。

 


 さて、だらだらと連載が続いている苺ましまろは、徐々に、と言うよりはどちらかというと唐突に、変わります。

 ここからは便宜上、1~4巻を前期苺ましまろ5~7巻を後期苺ましまろと分類させて頂きます。

 本当のことを言うと、もう少し細かく分ける必要があるのですが今回は割愛します。

ここで分類した「前期」と「後期」の苺ましまろ。この二者の相違点に後期苺ましまろ問題があるわけです。

 

 前期苺ましまろと後期苺ましまろの違いは色々とあります。

 例えば絵柄
絵柄の変化は長期連載漫画では避けて通れない道です。


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 こちらはコミック1巻の表紙です。2人とも小学6年生の女の子で、別に僕がロリコンというわけではないのですが、可愛く描かれていますね。

 

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 そしてこちらがコミック7巻の表紙です。
 ツインテールを見比べてもらうと分かりやすいでしょうか。1巻左のツインテールと、7巻中央のツインテール同一人物です。カラーなので塗り方の違いなども目についてしまいますが、全体的にキャラクターの顔が丸っこく描かれるようになっているのが分かると思います。キャラデザの幼児化です。よつばとでも同じ変化がみられるのですが、ロリは丸くなるものなのでしょうか。 


 絵柄の変化を「問題」として取り上げることはしません(避けられないので)が、強いて言えば僕は前期の絵柄が好みでした。

 

 他に変化と言えば、後期に向かうにしたがって暴力のインフレが起こります。

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 2巻の暴力です。痛そうで痛くない、ちょっと愛のある暴力です。僕がシャロちゃんにする腹パンと少し似ています。


 

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5巻の暴力です。基本的に人が吹っ飛びます。

 

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 7巻では満を持して見開き劇画タッチの暴力が登場します

 

 暴力のインフレは後期苺ましまろ問題に少なからず絡んでくるのですが、主な問題というわけではありません。が、強いて言えば僕は前期の優しい暴力の方が好きでした。


 それでは結局、後期苺ましまろ問題とはどんな問題なのか。

 それは、いわゆる「方向性の変化」です。
 当時はロックやってたバンドが急にポップになって音楽性の違いで解散するみたいなあれです。

 苺ましまろのキャッチコピーが「かわいいは正義」であるということは前述しました。かわいいを大前提として、そこから繰り出されるシュールなギャグが苺ましまろという作品の魅力です。

 基本的に前期苺ましまろ
かわいい:ギャグ=7:3 

 くらいの割合で構成されていると思います。

 ですが、この割合が後期苺ましまろでは崩れているのです。

かわいい:ギャグ=2:8 

 くらいの割合に逆転しているというのが僕の見立てです。
 別にデータをとったわけではないのですが、感覚でそれくらいです。

    前期苺ましまろでは、日常の場面を切り取って話を展開し、ギャグは添えるだけ、というスタンスが主流でした。

    しかし、後期では打って変わって、コント的な構成を主として、日常は添えるだけになっています。

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 1巻よりみんなで海に遊びに行く話。前期の話には、一種のストーリー性が見受けられます。

 

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 一つのテーマを元にてんどんするのは後期でよく見られる現象です。コント的な作風の象徴と言っても良いでしょう。

(ちなみに画像は「もったいないを他国の言語で言うとどうなるの?」というテーマです)

 

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挙句の果てには作中で本当にコント始めてます。

 

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 自分で考えたコントの終わりに「てんどんが多かったのが気にかかる」と、自ら予防線を張るのがにくいですね。

 

 要するに苺ましまろは「かわいいは正義」の日常漫画から、ダウンタウンに影響されたコント的ギャグ漫画になり下がってしまったのです。

  まるで、つまの上にあった刺身が、いつの間にかつまの下敷きになっていたかのようです。

 


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 この画像は7巻のものです。僕はこのコマを見てかわいいは正義」の終焉を決定的に感じてしまいました。

 

 この画像のツインテールの女の子、名前を美羽ちゃんと言います。さっきからぶん殴られたり表紙に出てきたりしている女の子ですね。この子は作中のボケ担当みたいなものなので、突っ込まれるついでに暴力食らったり、バク転して頭打って死んだりと、色々酷い目に合っています。

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(バク転して頭を打って死ぬ参考画像)

 

 ですが、いくら酷い扱いを受けるボケ担当の美羽ちゃんだって、苺ましまろではかわいく描かれていて、そこに作者の愛がありました。
 徐々に、破天荒で無機質なボケマシーンというキャラクターを築いてしまった美羽ちゃんですが、前期には女の子らしく涙を流すシーンだってあります。
 しかしそんなボケマシーン美羽ちゃんであっても、ここまでギャグタッチの顔芸をさせることは前期苺ましまろではありませんでした。かわいいを捨てさせることは、絶対に間違っても絶対にありませんでした。

 

 

 以上挙げた「かわいい」を切り捨て「ギャグ」に走り始めた苺ましまろの変化、これこそが「後期苺ましまろ問題」なのです

    前述した暴力のインフレも、ギャグに走ってしまった影響のためです。突っ込みが激しくなって、より作品に笑いを強調するのに一役買っています。

 

    推測するに、ばらスィー先生は15年もの時を経て、書きたいものが変わってきてしまったのではないでしょうか。

    最初はかわいい女の子が書ければそれでいいと思っていたのに、いつの間にかギャグがやりたくなった。ダウンタウンに影響を受けて、笑いをやりたくなった。

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  1巻のあとがきではたしかにこう言っています。

   

 15年もの歳月は、1人の人間の方向性を変えるには充分な時間です。僕も飽きっぽい人間なのでとてもよく分かります。

    違うことをやりたくなったのなら、新しく連載を始めればいいじゃないと思うかもしれませんが、それは、やる気のない漫画家には酷というものです。結果、だらだら続く苺ましまろはいつの間にか変容して、後期苺ましまろ問題は起こったというわけです。

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 前期苺ましまろは間違いなく名作でした。一つの宗教を築けるくらいに前期苺ましまろは聖書でした。

 小学生が好きじゃない僕でも、かわいいじゃんと思える作品でした。

 

 

 僕は後期苺ましまろ問題が残念でなりません。

 「グラップラー刃牙」が面白くって「範馬刃牙」まで全部読破した時の気持ちと似ています。

 

 

 ダウンタウンがいなければ苺ましまろはかわいいままでした。

 「作者がダウンタウンを好きだからギャグが面白い」という主張は、僕が言い換えると「作者がダウンタウンを好きだから苺ましまろのかわいいは終わった」という感じです。
 しかし、ダウンタウンがいなければ苺ましまろがここまでの名作になっていなかったのも、また事実なのです。
 自分の尻尾に食らいついたウロボロスの蛇のように、パラドックス的な問題も後期苺ましまろ問題は内蔵しています。
 いったい何が正解なのか、それは誰にも分かりませんが、ベストだったのは、前期のかわいさとギャグの黄金比苺ましまろが続いてくれることに間違いないです。

 


 苺ましまろ7巻の帯には「これからの『かわいいは正義』の話をしよう」という煽り文句がかかれています。

  が、「かわいいは正義」に「これから」はありません。

  かわいいは正義は、死んだ
  かわいいは正義は死んだんだ
  いくら呼んでも帰っては来ないんだ
  もうあの時間は終わって、君も人生と向き合う時なんだ

 


 いつまでも苺ましまろ読んでないで、就活します。

 

 

苺ましまろ 1 (電撃コミックス)

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